妊娠するための大前提
まず、これから説明することの前提として、人体のしくみを理解することから始めます。
人には多くの臓器があり、それぞれの働きがあります。各臓器も元をたどると、すべて細胞から成り立っています。
そして、これら細胞が働くためには、必ずエネルギーが必要になります。体を動かす筋細胞だけでなく、お肌(表皮細胞)も子宮・卵巣の細胞も脳細胞も全て成長・活動するためにはエネルギーが必要になります。そして、細胞内にはミトコンドリアが存在し、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを生成します。
エネルギーとは?
エネルギーとお話していますが、実際イメージつきますでしょうか?「太陽エネルギー」とか言いますが、なんとなくわかるような、わからないような…。そんな感じではないでしょうか?
ウィキペディアには、エネルギーとは「仕事をすることができる能力」と書いてあります。車のガソリン、スマホの充電(バッテリー)のようなものです。家電製品はすべて電気(電気エネルギー)がないと、そもそも動きません。どんなに性能が良いスマホも充電が切れたら何もできません。スマホで言う電気のような存在が、人間の体では主にATPというエネルギーになります。
また、多くの治療器は外部からエネルギーを入れます。低周波、超音波、レーザー(光治療器)、〇〇温熱器などは、それぞれ電気エネルギー、超音波エネルギー、光エネルギー、熱エネルギーを体内に入れてジュール熱を発生させて、局所的に温めて血流を集中させて治療します。難しい話になりますので詳細は省きますが、すべてエネルギーによって細胞を元気に働かせます。
治療などで局所にエネルギーを集中させたい時には治療器を用います。普段、体の中で細胞を元気に働かせるためには、自身の細胞が生み出すATPがエネルギーとなります。
エネルギーからみた不妊の2タイプ
エネルギー(ATP)の必要性はご理解いただけたでしょうか?これがないと、そもそも細胞が活動できない、成長できないのです。そして、エネルギーにおいて不妊にお悩みの方は、大きく2つのタイプに分かれます。
- エネルギーが必要なところへ届いていない
- そもそもエネルギー不足
1.必要なところへ届いていない人というのは、例えば、「いろいろ学んで考えて、頭でたくさんエネルギーを使って、大事な子宮・卵巣へ十分届いていない」など。体全体で生成できるATPの量は限られています。そのエネルギーをどこで使うか?脳だけじゃありません。アレルギーや炎症、体調不良などがあれば、体はそれを修復するために、そちらにエネルギーを使われてしまいます。
このタイプの人は、それを必要な臓器へ届けてあげることが必要になります。他で消費する分をなるべく減らし、妊活の場合は卵巣などの必要な臓器へエネルギーを回してあげる。実はそれほど難しいことではありません。当院でも整体やさまざまな機器を用いて行うことができます。
一方、2.そもそもエネルギー不足という人。体調を崩しやすい人はこちらの可能性が高いでしょう。しかし、普段は普通に生活している人でも、エネルギーの生成量が少なく、省エネで活動している女性も多くいます。例えば過度なダイエットなど、食事量が少なかったり、栄養バランスが悪い人など。妊娠、出産には大きなエネルギーを必要とします。一人で生きていく上では問題なくても、妊娠または妊娠維持のために十分なエネルギーがないと出産までたどり着くのは難しくなります。
このタイプの人は、自分でエネルギーを生成できる体にならないといけません。そのためには、食事・栄養も重要になってきます。細胞を元気にするためのサポートする施術は行えます。しかし、自身でも食事の内容を変えたり、サプリなどで栄養を摂取する必要もあります。
どちらのタイプにあてはまるか?あるいは両方の複合タイプの人もいます。これは、カウンセリングや資料を見せていただければわかります。
正しい栄養学の知識
ここで、栄養の話が出てきました。栄養に関しては、みなさん「妊活には葉酸」「ビタミンDも良いって言うから飲んでいます」など、ネットの情報などからすでに対策しています。しかし、結果が出ずに苦しんでいます。なぜでしょう?
栄養学っていわゆる学問です。表面的な知識では、今の自分にその栄養素が必要かどうかは、本当のところわかりません。「ここが不妊に良い経穴(ツボ)」といって何となくツボを押しているのも同じです。正しい知識と本当に必要な栄養素を見極めないといけません。
栄養に関する誤解
栄養に関する知識として、最も基本となるもの「3大栄養素」について触れておきます。昔、学校で習いましたね。3大栄養素って何でしょう?
- 炭水化物(糖)
- たんぱく質
- 脂質
この3つです。炭水化物は分解されて糖(グルコース)になります。近年、たんぱく質は大事と言われて意識して摂ってくれる人も増えました。しかし、糖と脂質はテレビCMなどでも悪者のように扱われています。でも、過剰摂取が問題なだけであって、女性は逆に控え過ぎの人も多くいます。
途中で出てきた細胞の図にもありますが、ATP生成のための一番の材料は糖です。糖が細胞内に入って、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系を介してATPを生成します。
脂質もエネルギー源になります。LDLコレステロールは悪玉コレステロールと言われていますが、実は女性ホルモンの材料にもなっています。
糖や脂質も3大栄養素の中の2つです。大事な栄養なので、制限し過ぎは悪影響になります。
3大栄養素+αとして、ビタミン、食物繊維、ミネラルがあります。これらは補酵素として働くなど、補助的な働きをします。もちろん体に必要で大事なものですが、あくまでエネルギー源や材料になるものは3大栄養素です。ここを改善しないと、そもそもの材料不足で妊娠は難しくなります。
- 卵胞が育たない
- 子宮内膜が厚くならない
- 妊娠維持ができない
体外受精を何度も行っているが結果が出ない人は、必要なところに、成長に必要なエネルギーが足りていません。この見直しが必要かもしれません。サプリなどの摂取は、食事とは違い計画的に摂取できるため、正しく使えばとても有効な手段となるでしょう。
治療の基本は「血流改善」
摂った栄養も必要な細胞まで届けなければ意味がありません。そこで必要なことは、血行を良くすること。全身の血行を良くすることもいいです。しかし、何かを改善するとなると、対象の臓器への血流を優先してあげることも必要になります。一点集中した方が、そこに酸素や栄養がたくさん送られて、エネルギ―もたくさん生成されて、細胞が修復・成長します。
まとめ
これが当院の基本の考えになります。体の中で起こる反応をイメージして、どこで引っかかるか?お話していく中で改善点を探します。
具体的には
- 正しい栄養が十分摂れているか?
- 消化・吸収ができているか?
- それが、ちゃんと必要なところへ届いているか?
- それが細胞に取り込めているか?
- 肝臓に余計な負担がかかっていないか?
- これらの働きをコントロールする自律神経が乱れていないか?
- 余計な炎症が体のどこかでおきていないか?
- 他に栄養素の働きを阻害するものはないか?
- 脳に余計な負担がかかっていないか?エラーを起こさないよう、余裕があるか?
- ホルモンの材料となるコレステロールもちゃんとあるか?
- ミトコンドリア自体の機能が落ちていないか?
細かく見ていけばキリがないです。そして、その原因がどこにあるか?さらに深掘りしていきます。あとは、個人の状況に合わせて、+αでやることを追加することもありますが、基本はこれがクリアできれば妊娠する日は近いです。それぞれにもポイントがあります。書き出すとたくさんあるように見えますが、ポイントをしっかり押さえれば大丈夫!
体質改善
今回は不妊の人を対象に書きましたが、不妊に限らず体のお悩み対策はすべてこの考えで対策できます。器質的な変化(骨折、変形など)は、病院での治療が必要になります。しかし、そうでない場合、この考え方で多くのお悩みを解決できます。私はそれを体質改善と呼んでいます。
不妊でお悩みの場合、体外受精が最終手段のように思っている人が多いですが、実際、体外受精を行っても結果に繋がらない人も多いです。それは、必要な部位へ必要なエネルギーを回せていないからです。体の中での細胞レベルでの反応(栄養学・生化学)に沿って考えれば結果は変わります!
こちらもご覧ください
「妊活にも腸や肝臓ケア①」
「妊活にも腸や肝臓ケア②」
「健康な体づくりの基本」(エネルギーバランスについて話しています)