不妊治療における先進医療は、日進月歩で進んでいます。不妊治療に限らず、健康保険で3割負担になる時は、保険診療と保険外診療を併用して行うことは原則として禁止されています。
保険診療でも、当然一通りのことは行えますが、使える薬や技術に制限があります。保険で認められたもの以外を行う場合は、保険外診療となります。保険外のものを行う際は、併用が原則禁止されているため、保険適応分も全て保険外で行うこととなります。それではあまりにも辛いため、保険外の物でも併用して行えるよう、特例のような形で「先進医療」として認定し、先進医療に認定されたものは保険診療と併用して行えるようになりました。ただし、先進医療分は保険外の自費治療となります。(あくまで併用できるというだけ)
順次、申請・認定されています。最新の情報は厚生労働省のサイトに掲載されますが、通院中の病院の先生に聞いた方が早いし、わかりやすく丁寧に教えてくれると思います。ただし、病院によってやっていないこともあります。
厚生労働省「先進医療を実施している医療機関の一覧」(【先進医療A】の後半に不妊治療関係が載っています)
子宮内膜着床能検査(ERA)
より着床に適した時期(着床の窓)を調べることで、より最適な、着床しやすい環境で受精卵を戻すことができます。不育症やなかなか着床しない人向けの検査になります。
タイムラプス
培養中の受精卵を、取り出すことなくカメラで撮影して発育状態を観察できるシステム。受精卵にかかるストレスを減らすことができ、培養器内の環境変化を防ぐこともできる。
二段階胚移植
受精卵(胚)を戻す際に、受精後2~3日目の初期胚を移植後、2~3日で別の5日目の胚盤胞を移植する方法。
胚が成長する過程で、なんらかの成長因子を放出していると考えられています。初めに移植する初期胚から成長因子等が出ることで、子宮内膜に働きかけ、着床しやすい受け入れ態勢を作ってくれて、その後に胚盤胞を移植することで、着床率がアップし、妊娠率も上がります。
ただし、卵を2つ戻すため、多胎(双子)のリスクがあります。
子宮内膜刺激術(シート法)
二段階胚移殖のデメリットである多胎(双子)のリスクを無くした方法。胚の培養中に、培養液の中に成長因子等が溶け込んでいると考え、初期胚の代わりに培養液を注入し、その2~3日後に胚盤胞を移植します。二段階胚移植と同様に高い妊娠率が期待できます。
子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE)
腸内には腸内フローラが存在し、腸内環境を整えています。同様に、子宮内にも子宮内フローラが存在し、子宮内環境を整えています。子宮内環境が乱れることで、妊娠・出産にも影響が及びます。子宮内の善玉菌・悪玉菌の割合などを調べ、改善することで妊娠率を向上させます。
PICSI(ピクシー)
ヒアルロン酸を用いて成熟した精子を選別する技術。精子は、卵子の膜にあるヒアルロン酸と結合する性質があり、未熟な精子にはそれができない。見た目だけでは判別できない良好な精子を選別し、顕微授精を行う。
IMSI(イムジー)
通常の顕微授精(ICSI)よりも高倍率で精子を観察し、精子頭部の形状異常や空砲でないか選定し、良好な精子を用いて顕微授精を行う。
子宮内膜スクラッチ
子宮内膜にわざと小さな傷をつける方法です。そうすることで、内膜は自己修復を行います。その際、インターロイキンなどのサイトカインが分泌されます。これらは胚が着床する過程でも分泌され、着床に適した環境になると多くの論文で発表され、着床率の向上が期待できます。