体が機能するためのエネルギーについて

前回、ミトコンドリアがATPというエネルギーを生成するお話をしました。そのエネルギーによって体が活動しています。筋肉も臓器もです。
ここで、少しエネルギーについてお話します。私も昔は、「エネルギー」ってなんとなくわかるけど、漠然としたイメージしかありませんでした。みなさんもそうじゃないですか?太陽エネルギーとか言うけど、「エネルギーって高い方がいいんだろうな~」くらいにしか理解していないのでは?

生化学の教科書によると、

分子には固有のエネルギーが共有結合の形で保持されているので、結合が切れるとエネルギーが熱になって外に逃げたり、それによってほかの反応が起こったりする。他方、共有結合の形成では、エネルギーを光エネルギー、熱エネルギー、化学反応エネルギー、電位などの形で供給する必要がある。物質が内部にもつエネルギーのうち合成、移送、運動など、仕事につかえるものを自由エネルギーという。化学反応では自由エネルギーの出入りが見られる。自由エネルギーが減少する(エネルギーが放出される)反応は自発的に進むが、増える反応はエネルギーを供給してやる必要がある。エネルギーは最終的にという形になるため、もし自由エネルギーが仕事に使われないと熱として系に放出される。

南山堂「生物・生化学・分子生物学」p77

とあります。ちなみに、エネルギーの単位はジュール(J)で、1J=0.24カロリー(cal)です。
まとめると、

  • 物質は結合した状態でエネルギーを保持している
  • 結合が切れると、エネルギーが放出したり、使われる
  • 体を働かせる仕事(合成、移送、運動など)に使うものを自由エネルギーという
  • 自由エネルギーが減少(放出)する反応は自然と起こる。エネルギーを供給する必要がある

寒くなると、体を寄せ合ったり一人でギュっと丸くなるのも、本能的に熱(エネルギー)を逃がさないようにしているんだろうな~と私は思います。固まって熱を逃がさない!それに近いようなイメージが分子レベルでも行われています。
本来なら、熱を逃がさないようにするよりも、生み出さないといけません。「エネルギーを供給する必要がある」とありますが、細胞(中でもミトコンドリア)にエネルギー源を供給するためにもグルコースが必要です。糖や脂質は「摂り過ぎて良くない」というイメージがあるかもしれませんが、これらは3大栄養素のうちの2つです。大事な栄養素であり、制限し過ぎは良くないです。健康・美容のために制限し過ぎている女性は結構多いです。

話が少し変わりますが、「エントロピー増大の法則」というものもあります。物質は常に細かく振動しており(熱をもつ)、拡散して均一になろうとする、というものです。コップの熱湯も冷めていずれ室温と同じになります。この法則は生物にもあてはまり、生物はエネルギーを使ってエントロピーを減少させています。

これから寒くなり、厚手の靴下や腹巻で対策する人が増えます。気持ちいい、ホッとするなど、自律神経的にはいいかもしれませんが、実は細胞的にはあまり対策になっていません。ミトコンドリアが元気に働いて、エネルギーを作り出し、細胞自体が元気に働き、そのために酸素や栄養素が血流に乗ってしっかり運ばれて、血流も良くなり、エネルギーと共に熱を内部から発生させる。本来は、そんな対策が必要です。
逆に長年腹巻などで守られると、脳はそれを覚えて腹巻があることに慣れて、あることが当たり前になってしまいます。手放せなくなる恐れがあります。脳の適応能力は良くも悪くもスゴイです。

冷えは正にエネルギー不足の象徴です。エネルギーを貯め込めていない体は、体の各所に不具合をもたらす恐れがあります。妊娠、出産には、卵胞細胞の成長、胎児の成長など、ただでさえいつも以上のエネルギーが必要になります。妊活に限らずですが、全ての細胞がしっかり育つ体内環境を作らなければなりません。

ABOUT US
鈴木 清文
静岡県浜松市出身。 浜松西高理数科卒業後、大学進学、就職と、流れに任せて時間だけが経つ。生きがいを見つけられず、自分らしい生き方を考え退職。柔道整復師資格を取得後、接骨院を開院。同時に自身夫婦の不妊に対し、何ができるか考え始める。 現在、不妊に悩む夫婦のためにできることを様々な角度から考え、「クリニックで行わないアプローチをなんでも取り入れよう」と日々考察中。患者さんと病院の架け橋役を目指し、これまで200件以上の夫婦に笑顔をお届け。日本生殖医学会会員。 好きな言葉 <夢・生きがい・妄想・まずやってみよう!>