妊活中の方でも時々見られる鬱(うつ)と炎症の関係について触れたいと思います。(以前の記事はこちら「不妊治療と炎症について」)
ストレスが長引くと脳でも慢性炎症が起こり、幸せホルモン「セロトニン」が減る。
神経細胞もダメージを受けて、うつ病を引き起こす。
(池谷敏郎先生著書「体内の炎症を抑えると、病気にならない!」p85より)
慢性炎症がセロトニンの量・働きを低下させる
これまでは、脳内でモノアミン(神経伝達物質)が不足しているため、情報伝達がスムーズにいかないことが原因ではないか?と考えられていました。モノアミンとは、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質のことを言います。
特にうつ病の人は、セロトニン、ノルアドレナリンなど、感情に係わるメッセンジャーが減少していると言われています。それにより、ボーっとしたり、心が不安定になったり、意欲が低下したりします。それに対し、脳内のセロトニン、ノルアドレナリンの量を増やすために「SSRI」「NaSSA」などの抗うつ薬を用います。
しかし、全員が良くなるわけではなく、効果が出る人もタイムラグがありました。そんな中で注目されたのが「慢性炎症説」でした。長引くストレスが脳に炎症を起こし、うつ病を引き起こしているのではないか?というものでした。
ストレスなどにより炎症メディエーター(炎症を引き起こす物質)が増えると、脳の白質が障害を受けます。そのため、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きも悪くなります。さらに、炎症メディエーターは、トリプトファンをセロトニン以外の合成に使ってしまい、セロトニンを減少させてしまいます。
つまり、慢性炎症によって、セロトニン等の働きも悪くなり、不足もします。
ストレスホルモン「コルチゾール」
さらにもう一つ。以前は、うつ病は脳への機能的問題とされていましたが、最近は物理的な障害があることがわかってきました。
ストレスは炎症メディエーターが増えると同時に、ストレスに対抗するためのストレスホルモン「コルチゾール」も分泌され、炎症を抑えるよう働きます。ストレスを受け続けるとコルチゾールが過剰になり、活性酸素が増え脳細胞を死滅させます。また、コルチゾールも分泌しずらくなります。
特に海馬や偏桃体にダメージが起こるといいます。その海馬、偏桃体はうつ病の患者さんは委縮している報告が多数あります。
このように、うつ病も炎症と深く関係しています。慢性的な小さな炎症でも、長く続くことで飛び火します。不妊にも影響します。